「いっけ~!そこだ!」

「いいぞ、その調子!」

「ナイス、ファロー!!」


あちこちでスパン、スパンと球の飛び交う音が響く。


「きゃ~!田口先輩、優勝だぁ!!」


春の新人戦。

期待されていた一年生のチームは、残念ながら優勝はできなかったが、

その後に行われた地区大会で、田口先輩が見事に優勝を飾った。


「おめでとうございます!!」


テニス部の部員たちが、田口先輩の周りに集まる。

先輩は額の汗を拭うと、ちらりとこちらに視線を投げた。


「いいなぁ、ゆりってば」


「何が?」


「みんなの憧れの田口先輩を独り占めなんて」


同じ一年のサチが唇を尖らせる。

その場にいた数人が、同意するように頷く。