「俺さ。今回のことでちょっと反省してんだよ」
草太が?
どうしてだろう?
「今までさ。まゆみには難しいって思ったものはほとんど俺がやってただろう?」
「うん……」
「それってさ。失敗して自分が嫌な思いするからってわけじゃなくて、まゆみ自身が失敗することで落ち込むからだったんだけど……」
知ってる。
そういうやさしい気遣いからだってわかってたから、わたしも必要以上に食い下がることをしなかった。
「でも、それじゃダメなんだよな」
ん。
今なら草太のいわんとしてることがわかる。
「失敗を重ねなきゃ、何をすると失敗しちまうのかっていう発見が出来ない。それをさせないのは、やさしさなんかじゃなくて、ただの甘やかしなんだよ」
そしてわたし自身も、そのやさしさに甘えてた。
例えばテストだって、それをするのは『成功(正解)するかどうか』をみるんじゃなくて、つまりは『何を理解出来ていないか』を確認するためのものなんだろうな。
それらは似ているようで違う意味を持ってる。
後者の意味があるから、失敗しても何度となく挑戦する意義があるんじゃないかな。
一足飛びに何でもすぐにゴールにたどり着けるほど、わたしたちは器用じゃない。
でも、少しずつなら、あきらめさえしなければ、きっと進めるから。


