「いいんじゃねぇの? それでさ」
「どういこと?」
あ~んの手がすっかり止まってしまったわたしからフォークを奪ってぱくりぱくりと食べながら、
「失敗は成功の母っていうだろう?」
確かに。
でも棚からぼた餅を果たして“成功”といっていいのかな?
失敗は失敗でしかないし、おまけにトータルでみて成功にはほど遠い。
わたしがそういうと、
「ん。だからな。俺ぁありゃ、ちょっと違うんじゃないかって思うのよ」
「?」
何がいいたいのかよくわからなくて首を傾げると、よほどアボカドが気に入ったのかそれを重点的に食べながら草太は言葉を続けた。
「失敗は、さ……“発見の種”なんじゃねぇかな」
「発見の、種?」
「そ。成功ってやつはさ、ひとつのゴールだろう? でも失敗から学んで、いきなりゴールに行き着くなんてこたぁなかなかあるもんじゃない」
失敗と成功の間には案外長い“距離”があるもんだ、といって彼は続けて、
「失敗して、その失敗から学んで、じゃあ次に何が起こるかってぇと……次のステップに向かうための“発見”なんじゃねぇかな」
そう、いわれてみれば、そんな気がする。
ひとつの物事は必ずしもひとつの行程で出来ているとはかぎらなくて。
簡単な手作りチョコでいえば『材料』『分量』『湯煎』『型流し』『冷やし固め』『デコレーション』とある。
それらすべてをクリアして初めて、ひとつの“成功”といえる。


