無意識に握りしめていた手のひらから力を抜く。
ゆっくり立ち上がると、約束した時間にはまだ針を刺さない時計を見上げた。
それでもこの場に居たくなくて、自分の机まで進み机の上に広げた問題集をかばんへ放り込む。
そういえば、そろそろ消しゴムがなかったはずだ。
赤のペンも訂正しまくったせいでずいぶん減った。
近々買いに行かなきゃ。
さっきのお金、ちゃんと拾っとけばよかったなぁ。
なにも考えないように別のことで思考をいっぱいにする。
今はまだ、このことに関してちゃんと考えたくない。
机に広げた文房具をペンケースにしまっていると、扉の開く音がした。
「おい、あかり」
その声に手に持っていた付箋が滑り落ちる。
「おまえ金落としていったぞ。普段人におごれおごれ言うくせに自分の金に対して執着うすくね?」
やけにキュッキュッと足音が鳴っているのは、普段校舎で履いていない体育館シューズを履いているからだろう。
おかげで、こちらに近づいてくるのが嫌でもわかった。

