そんな事より。

しばらくここに来ていなかった『俺』を覚えていてくれた。

毎日、目まぐるしいくらい速い速度で全てが回っていて。

郵便屋の誰が来るかなんて。

気にしていられないのに。

この人は覚えてくれていた。





後で環から聞いた。

その昔、この人は全日本だけどロードレース選手権でチャンピオンにもなった事があって、あの時の実力なら世界も目指せたのに、小さなバイク屋の店長をしているって。

本当なら今頃、世界のどこかで悠々自適に過ごしていたかもしれないのに…



そんな、どこか素朴で地味…いや、地道な生き方をしている門真さんに惹かれた。