(さて、ご飯ご飯!)

弁当箱を持って小走りに屋上へ続く階段へ向かう。

「江南!!」

「あ?」

階段に足をかけた時に声をかけられた。

「お前、屋上は生徒立ち入り禁止だと言っただろう」

振り返ると白衣を着た女性が腕を組んで歩いてくる。

「瀬良(セラ)ちゃん」

モデル並みにスラリと長い足でゆっくり目の前まで歩いてくると、いきなり頭を小突かれた。


「先生をつけろと言ってるだろ」

「可愛い生徒に暴力反対!!」

「大丈夫だ、可愛い生徒には手をあげない」


瀬良 那奈架(セラ ナナカ)保健室勤務、言葉遣いは悪いが男女問わず憧れの的の美人さん。

「女らしくしないと由季ちゃんに嫌われるよ〜」

「うるさい、もぉいいからさっさと行け」


何を隠そう、瀬良ちゃんはあの数学教師、黒崎 由季弥の恋人だ。
勿論、周りには内緒で。
なんで俺が知ってるかって?
そこは企業秘密で。

「んじゃ!お幸せに〜」

呆れ顔の瀬良ちゃんに手を振って階段を駆け上がる。