だんだんと足音が近付いてきて、記憶の中から現実に引き戻されていく。


扉の前で足音が止まり、錆びた音とともに見慣れた顔がこちらを覗いた。


「…あ……律」



話の途中、いきなりの訪問者に間抜けな声が出てしまう。

律は一つ大きな溜め息をつくと扉を押して屋上に入ってきた。


「何してんの、緋音」

「あぁ」


横をチラッと見て視線を律に戻す。

律も私の横の人物に視線をやり驚いた顔になる。


「…………」


しばらくの無言。

先に口を開いたのは、


「何見てんだよ」

フェンスにもたれかかって目だけを律に向けた長門 夕貴。


「…………副総長?」


夕貴を指さして私に首を傾げながら律が問う。


「貴羅はいない」

「いや、そんなこと知ってるけどさ…………誰?」

「龍姫、なんなんだこの失礼な奴は」

「失礼な奴ってどぉいうことだよ!?ってかなんで龍姫のこと知ってんのさ!!」

「うるさい奴だな」

「うるさくな〜い!!」

「人に向かって指すんじゃねぇよ」

「ムカつく〜!!」

「てめえなんかにムカつかれても痛くも痒くもねぇな」


目の前で言い争う2人。