「貴羅っ!」

「ん〜?何?緋音」


いつもと変わらない溜まり場の倉庫。

ソファーに座り学校で出された課題を解いていく。


「ここ解んない」

数学の問題集を広げシャーペンの先でつつく。


窓際でバイクの雑誌を見ていた貴羅は雑誌を閉じてソファーの私の横に座る。

「どこ?」

横から問題集を覗きこむ。さらさらの金髪が頬に当たってくすぐったい。


「緋音?」

気がついたら目の前の金髪を手で掴んでいた。

細い髪の毛が指に絡まる。

「緋音?痛い」

「綺麗な髪」

そのまま髪を鋤くとすっと通った。

「緋音のが綺麗だよ?」

視線だけ動かして貴羅がこっちを見た。

そして私の頭をくしゃくしゃに撫でる。


「なっ!?」






ガチャ…

「…………………」

扉のノブに手をかけたまま固まっている男・早川 維世(はやかわ いせ)。

何を見て固まっているかというと、

「ちょっ!?貴羅!離せ!」


私に抱きついて頭を撫でている貴羅。



「あ〜また総長たちがイチャついてる〜」

尚も固まっている維世の後ろからひょっこり顔を覗かせたのは江南 律(えなみ りつ)

2人とも紅龍華の幹部。


「律っ!!」

「勝手に覗くなよ〜」


慌てふためく私と呑気な貴羅。





こんな時間が楽しかった。