"それ"が何なのかわかったとき、 あたしは震えが止まらなくなった。 髪の長い女の人。 肌が黒ずんでいる。 それだけでも怖いが それ以上に怖いのは、 その女が浩汰を食べていること。 あの音は 人を食べている音だったんだ。 浩汰を貪る光景は 目を覆いたくなり、 あたしは思わず吐いてしまった。 逃げなきゃ― 逃げなきゃ― 逃げなきゃ― でも、 体が動かない。 これが金縛りなのだと思った。 ゆっくりと 女がこちらへ向く。