「律って知り合い、凛に居た?」
そう、これは…凛が熱にうなされながら呼んでいた名前。
あたしはこの『律』という存在のことが、前から少しばかり気にかかっていた。
「それ、凛が遼に言ったのか?」
「えっ…あ、いや。そういうわけじゃないんだけどさ」
妙に食いついてきた夏に、違和感を覚える。
「じゃあ何で律さんのこと知ってんだ…?」
あたしにそう言った夏の表情は、どことなく切なそうで。
鈍感だ、とよく言われるあたしにも、律という人物が何らかの意味で、特別な人なんだと感じさせた。
「…いや、何て言うか…寝言で言ってたんだよね」
「凛が、か?」
「う、うん…」
夏は不審そうに眉をひそめた。
「凛…何考えてんだ」
頭をかかえる夏。
な、何よ…そんな素振り見せられたら、余計気になるじゃんか!!
とにかく、律さんって人が、凛と何かわけありみたいなのは確か…かな。

