「届けてください、如月さん」
「えっ…なんであたしが!」
「仕方ないでしょう。俺は他の部員を誘導しないといけませんから」
断ろうを思ったけど、暦くんの氷の眼差しが気になってそれはやめた。
この人に逆らったらどうなるか…ふふふ。
「分かったよー」
「ありがとう、頼みましたよ」
「はいよー」
あたしがしぶしぶタオルを受け取ると、暦くんの凍った顔は崩れて、優しい笑みになった。
いっつもこんな優しい部長だといいのに…。
あたしは唇をとがらせながら、凛が入っていったコテージを目指す。
「お…俺も行くっ」
「へ?」
後ろから追いついてきたのは夏。
やたら焦っているようで、なぜか息が切れている。
「つっ…付いて行く、俺もっ!」
「あ、うん…いいよ」
なに、このテンションの変な夏…。
そう思いながら、あたしは数歩下がって夏の歩調に合わせると、再びコテージを目指して歩き始める。

