遼SIDE


黒板の上の方に手が届きにくかったので、あたしはお助けマン・夏くんを呼んだ。


てっきりめんどくさがって文句のひとつでもたれると思ってたけど…。

何かおかしい。

気がする。


夏はやたらドギマギしながら、わざとらしくCMソングをハミングしている。


さっきから目を合わせようとしないし…何なのよ、夏。


「夏さあ、なんかあった?変だよ、夏らしくない」

「えっ!?…それは」


あからさまに動揺してる気がしなくもない。


「別に…合宿楽しみだなーと思ってただけだぜ」

「なんだ、それだけっ」

「なっ…それだけって何だ、それだけって」


心配したあたしがバカだったのかも。

夏はすっかりいつものお調子者に戻り、鼻歌を歌っている。


「おらっ」

「わっ!?」


あたしの顔の前でパフンと叩き上げられた、黒板消し。

チョークの匂いが微かにして、白い粉で視界が隠された。


な、いきなり何するんだ、こいつ…。

あたしは顔と髪の毛に付いたチョークの粉を払いながら、夏に睨みをきかせた。