後ろに気を取られていた。
そのせいで、突然誰かにぶつかってしまった。
「…何してるんだ、朝から」
転びそうになったあたしの両腕をしっかりと掴んでいるのは、背が高い男の子。
「紅次郎っ」
「…遼、朝から元気だな…」
「ごめんなぶつかっちゃって」
「別に、いい」
こいつは東紅次郎。
同じく、テニス部部員。
前髪に入っている銀のメッシュが眩しい。
背も高くていっつも無表情だし無口だから、よく怖い人に見られがち。
…だけど、不器用なだけですごく優しい奴なんだってことが最近分かってきた。
隠れファンも多いらしい。(夏情報)

