―うだるような暑さだ。

まだ夏じゃないって言うのにさ。

神様、もう少し涼しく過ごさせてくれたっていいじゃないか。


「…うぁ〜…あちぃ」


あたしは机に伏せて、真夏日の放課後を乗りきろうとしている。


「遼、だらしないぜ」

「そういう夏こそ、魂抜けてるよー」

「俺は平気だ。夏男の夏だからな」

「…わけわからんわ」


前後の席同士で、グダグダな会話をするあたしと夏。

「…二人とも、早く部活に行きなさいよ」


そんな状況を見兼ねて、暦くんが怖い顔をして言った。


「鬼だぜ暦ー」

「暦くんは暑くないのー」
「暑いと思うから暑いんですよ。分かったら早く部室に行きなさい」


暦くんは丸めた教科書で、夏の頭を叩いた。


「いてっ」

「如月さん、君も叩かれたいんですか」

「い、いいです…部活行きます…」


もう少しこうしてようと思ったけど、暦くんに本当に叩かれそうだったのでやめておいた。