「なっ夏、速いっうおおっ」
あたしは追いつけずに、足が地面に引きずられそうになる。
あぁ駄目だってコレ。
コケるって、コケる!
「なんだよー、このくらい余裕だぞー」
走るのをやめた夏は、呆れたような、つまらなさそうな顔であたしを見る。
息をゼェゼェ切らせながらあたしは言った。
「何、言ってんだ…はー、はー…夏と一緒にすんなぁ…」
夏は平均より、かなり足が速い方だ。
「あーそれ、褒めてくれてんのかよ」
「うーん」
夏が一瞬、しっぽを振って喜ぶ犬に見えた。
あたしははぐらかすと、再び教室へと足を動かした。