「あ」
その瞬間、視界に見慣れた金色が現れた。
「凛!」
あたしはのんびりと歩いている凛のもとへ駆け寄った。
「…あ、お前かよ」
「凛、タオルあったの?」
凛はもうジャージに着替えていて、水に濡れたままの形跡はない。
「あれぐらい、すぐに乾いたよ」
「そうなの。んじゃ無駄足だったね…よし、帰るぞ夏っ」
あたしはくるりと体を回転させ、夏の方を向いた。
「…おい、夏?」
「え…あ、ああ!!」
ぼんやりと何処かを見ていた夏。
あたしがもう一度声をかけて、ようやく気が付いたようだった。
…ここ最近、妙に夏の様子がおかしい。
急に、なんだ。
「遼、何やってんだ、帰るぞ」
「あ、うん」
まったく…何やってんだはお前だよっ!!
「りーん!お前も早く暦のとこ戻るぞ」
夏は少し後ろにいる凛にも声をかけた。
凛は「おー」と生返事をすると、特に急ぎもせず、のんびりとこっちに向かって歩き出した。
「なぁ、如月」
「ん?」
あたしは苗字を呼ばれた方を振り向く。
すると小走りであたしの方に走ってくる凛の姿が。
「…凛、何持ってんの」
「あぁ…これよ、さっき海辺で見つけたんだよ」
「どれどれ」
あたしは凛の細くて長い指の中から、小さな欠片を受けとる。

