海辺の狼〜イケメン4人に愛されて〜


「ね、夏」

「何だよ」

「教えてくれないかな…律さんのこと」

「………っ、けど、遼が知っても得にならないしよ」

「いいの」



単なる、好奇心だった。

人の過去を探るなんて、自分がされたら嫌だろうと思って気が引けたけど、あたしは止めなかった。

止められなかった。




「…そうだったんだ」

「い、言っとくけど凛や暦や紅次郎には言うなよ!!まあ、遼に言えるのはここまでだ」

「…分かった」


夏は口に人差し指を当てて、何度もあたしに念を押した。


あたしは夏から聞いた話を頭の中で反芻する。


凛と律さんの関係。


それは、特に珍しくもなく、思ったより普通な関係だった。


『元カレと元カノ』


簡単に言えば、こう。

律さんは女の人で、凛が昔付き合っていた人。


それだけしか、夏には聞かされなかった。


「…なんだ、よく考えると、そんなに珍しいことでもなかったんだね」


あたしは目と鼻の先に広がる海に向かって、ポツリと言い放った。


「…ま、そう思ってればいいんだよ」

「なにそれ、どういう意味なの」

「何でもない!それに、これ以上話に突っ込まない約束で言ってやったんだからな!!」

「は、はーい」


あたしはしぶしぶ返事をすると、夏から視線を外す。