どうやら河野さんは売り上げを見るためだけにここへ来たのではなく、

河野さんが手がけたポップを配るために、あちこちの書店を回り歩いてくれたらしかった。


「あ、ありがとうございます……!凄い嬉しいです、これ、大事にします。

河野さん大好きです……!」


そう言ってあたしが鼻を赤くしながら顔の前でポップを握りしめると、

河野さんはぶはっと吹き出して、豪快に笑った。


「そう?そんなに喜んでくれるんじゃー、俺も作った甲斐がありますよ~。

じゃあ、これで次からも、もっと頑張ってくれますか」


「もちろんです、もっと頑張ります!

これ、河野さんだと思って、机の上に置いて見張られてるつもりで頑張ります……!」


河野さんは、また豪快に笑った。



駅前に着くと、ここから別々の方向になるので、

あたしは深々とお辞儀をして「それではまた」と、挨拶をした。


そして、あたしが家に向かって歩き出した時だった。