かんのれあ

「山崎さん、お疲れさまです」


編集部に着き、山崎さんに背中から声をかけた。


するとあたしを鏡華さんだと思った山崎さんは、「お疲れ」と言いながら振り向き、顔を固めた。



「は?何でかんのさんココにいんの??」


笑いながら怒ったような口調。


明らかに動揺しているのがわかる。


「ごめんなさい、どうしてもお聞きしたい事があって、電話しても山崎さん出てくれないから……

鏡華さんって言えば会ってくれるかもと思って嘘つきました」


山崎さんは鏡華さんの名前が出たのにさらに動揺したらしい。


「ちょ、こっちこっち」と言いながら編集部から出て、

エレベーターのある場所から更に奥にある、人気のない階段まで連れてかれた。


あたしも編集部の真ん中でこういう事を言うのは気が引けたので、

二人で話すのにちょうど良い場所だと思った。