かんのれあ

「運だけの作家になんて私、負けないから」


鏡華さんは鼻がくっつきそうな程に顔を寄せ、あたしを押しやるように、

人差し指で強く額を押してくる。



「せいぜいどこまでその運が続くか見ていてあげる、あなたなんかには届かない所で」


そしてあたしに対してそう宣戦布告をしつつ、自分自身の決意を固めるように言った。



当分は落ちぶれてやんない。

もっと高みへ行くんだと。



「確かに今回の運は……認めますけど……、それでも、これからは運だけだなんて言わせません。

鏡華さんにだって負けません」


「ふん、どうだか」



あたしたちはしばらく睨み合う。


けど、鏡華さんが口の端をほんの少し緩めた気がしたので、

あたしも強気の色を残しつつ、緊張の糸を緩めてそれに応えることにした。