エレベーターから降りると、

静寂の中の自分の足音が何故か恥ずかしく思えてしまい、

思わずあたしはしのび足で、編集部のガラス張りの扉の前まで向かう。


そっと開けると、物で溢れかえっているものの、

人がいない分酷く閑散とした風景に見えた。




この部屋には、誰もいない。




窓から日が差し込むものの、

外に比べて、この部屋は少し薄暗いらしい。


辺りを見渡すと、一箇所だけ、

奥の蛍光灯がそのすぐ下を照らしていた。



相変わらず人影は見当たらないけど、しばらくそこを見つめていると、


ガサ、ガサ、


と、
物をあさるような音が聞こえてきた。



床に膝をつきながら書類をまとめている、

河野さんだった。