そうして夜中だというのに、

あたしは鏡華さんにメールをした。



『純粋な恋愛モノで、お願いします』



それから押入れ代わりのクローゼットから原稿用紙を取り出すと、

HBのシャーペンを握り、机に噛りついた。




パソコンの文字じゃ伝わらない。


選べる言葉が少ないせいで、

手書きの文字でも、伝え切れそうにないというのに。



未熟で、歪で、何度も何度も紙を破りたくなるのを、

ぐっと堪え、


その先にあるもの―――
河野さんに、読んでもらいたい。
この気持ちを、少しでも、知ってほしい。


それを思うと、苦しみながらもその衝動を堪え、

壁を越えることができた。


壁を越えるとその先には、

書くのが楽しくて仕方が無い、高揚感。


まるで視界が切り開かれたと同時に、地平線まで広がる海を見つけた時のよう。


溢れ出す気持ちを綴るのに、手が追いついてくれないのが、もどかしくて堪らない。