しかしすぐに男の手はある物にぶつかった。
 腹部の中で取り分け温かく、太い物……腸だ。

「邪魔だな、コレ」

 男はぶっきらぼうにそう言うと、一気に腸を引きずり出した。
 腸は開腹したときよりも多い湯気を出しながら地面へと転がり出る。
 その長さに男は少し驚き、可能な限り腸を引きずり出す。
 出し切ってみると、女の体の横に巨大な糞が出来たようだった。
 それでも腸はやや動き、まるで生き物のようで男は少し気味悪く感じた。

 男は、静かに立ち上がり、糞のようなそれを、思いっきり踏みつける。
 まるで、泥沼を歩いているような嫌な感触と音がでる。
 それに男は顔をしかめ、腸の残骸を蹴り飛ばす。
 しかし、腸は身体と繋がれたままで、嫌な音を出して女のあしの方へと移動しただけだった。

「飽きた。大きさ変わっても犬と一緒かよ」

 嘲笑すると男はナイフを拾い上げ、女の体を一瞥してその場を去っていった。
 後には、未だに湯気をたてている死者の骸が落ちているだけであった……。