寒々とした冬の風の中、刃渡り30センチ程のナイフが月光を怪しく反射して優美に、しかし素早く女の滑らかな腹部の皮膚を斬る。
 女に悲鳴はない。一時間前、彼女の命はすでに絶えてしまったのだ。
 死因は青酸カリ……有名な毒だ。ナイフを操っている男が、薬の売人から麻薬などと一緒に買い占めたもの。

 世の中には、金さえ払えばどうにでもなる事がある。それが正しい悪いに関わらずだ。実際、男は数十万円と引き換えに少量の麻薬と共に購入した。

 全ては、人を解剖したいという単純かつ忌み嫌われる欲求のため。

 やがて、男のナイフが女の柔らかい皮膚を綺麗に縦に裂いた。
 たちまち、女の腹から湯気があがって少し黒っぽさのある血液がまるで湧き水のように流れ出し、女の滑らかな皮膚を伝って地面へ染込んでいく。

 男は黒さが少しある血液を見ながら、「死んでいるからなのか、それとも元からこの女がメタボ気味なのか……」と口元を若干歪めて言い、血液が未練がましく付いているナイフを自分の横へと投げ捨てる。

 そして、男は今だ血がとどまる事なく流れ出す女の腹部へ、手を突き入れた。