香織はシンナー常用者だ。


だからいつもこの部屋に使用後に入ると、あたしはその匂いで頭が痛くなり、吐きそうになるんだけど。


あんぱんもアンパンも好きだなんて、冗談にもならない。


香織はいつも満たされなくて、それは酒を飲んでも、ブランド物を買っても、男とセックスをしても拭えないらしい、心の闇。


だからってこんなもんに逃げるなんて、あたしには理解出来ないけれど。


灰皿には、流星の残して行ったものだろう、赤ラークのピンカスがある。


ベランダでため息混じりに煙草を吸っていると、香織がもぞもぞと起き上がってきた。



「ありゃ、百合ぃ?」


「遅いよ、やっと気付いてくれた?」


まだ微妙にろれつが回っていないけれど、でも何とか正気を取り戻してくれたらしい。



「今日、仕事でしょ?
どうせこんなことだろうと思って迎えに来たの。」


「えへっ。」


ぶっ飛んでる時の香織は可愛い。


まぁ、そういう問題じゃないんだけど、でもいつもこんな感じで怒る気力がなくなってしまうのだ。


誰が何をしていようと関係はない。


だから香織が流星と、この部屋でシンナーだろうがそれ以外のモノだろうがを吸っていたとしても、それは興味のないことだった。



「準備しないなら、あたしもう行くからね。」


「えー、待ってよぉ!」


「アンタはクビになっても良いかもだけど、あたしは困るから。」


クビになったって困ることなんて何もない。


けれどもあたしは、懲りもせずに男に抱かれて金を稼いでいた。