ジュンには年老いたおばあちゃんがいる。


そして彼は、おばあちゃんが心配で、たまに地元に戻っていることも知っている。


帰る時に一応誘われるけど、でもあたしがそれに同意することはない。


あたしはあの町に帰る理由はないのだから。



「もうすぐクリスマスだなぁ。」


「あぁ、そんなもんもあったね。」


「それって女の台詞?」


うっさいなぁ、とあたしは、口を尖らせた。


予定なんてものはないし、クリスマスだからってあたしは、きっといつもと何も変わらないはずだから。


瑠衣とは相変わらず、明日の予定さえ話さない。


だから当然のように何か約束するでもなく、そんな行事ごとさえ話題にはのぼらないのだ。



「ジュンだってどうせ仕事でしょ?」


「どうせとか言うな。
俺が店にいないと泣く子だっているんだぞ。」


「へぇ、それはそれは。」


馬鹿にするように笑うと、彼は不貞腐れたご様子だ。



「この街でクリスマスなんて、ただの金儲けのためのイベントじゃん。」


目の前には、酔っ払った香織と、それを介抱するヘルプのホスト。


流星は、他の卓でやっぱり女に酒を煽っていた。


潰れた客のフォローもしないだなんて、一体女を何だと思っているのか。



「お金使わなきゃ、偽物の優しささえ手に入らないなんてね。」