どうしてこんなことを言ってしまったのだろう。


でも、気付けば言葉は口をついていて、彼は一瞬驚いた後、また呆れたように笑っていた。


こんな街の中で、泣きながら告白したあたしは馬鹿すぎる。


利用する、ということの意味はわからないけど、でも、頭の中がぐちゃぐちゃで、だから何だって良かったのかもしれない。


あたし達はこうやって、深みにはまって行ったね。



「何だよ、急に。」


言葉とは裏腹に、瑠衣の胸の中に納められる。


死んでる人みたいに冷たいその体からは、アキトの甘い残り香が香っていた。



「俺も好きだよ、百合のこと。
だから何かわかんねぇけど泣くなよ。」


この男は、どんな顔してこんな似合わない台詞を言っているのだろう。


けれどそれが本心であることを願っている自分がいて、だから笑えてしまうのだ。


愛してるの意味もわからないのに、好き、という言葉を使いたがる。


それはあたしたちなりの、所有欲だったのかもしれない。



「疲れてんだろ?
帰って寝てろよ、ここにいても風邪引くし。」


一緒に帰ろう、とは言われない。



「瑠衣は?」


「俺、ちょっと。」


ちょっと、何なのか。


でもそれをあたしが聞くことはなく、黙って瑠衣から体を離した。


もう、どこが痛いのかなんて定かではなくて、ただ、そんなに悲しそうな顔をしないでほしいと思う。