「出掛けんの?」


あたしの背中越しに、瑠衣は問うて来る。


薄々はわかっているのだろうが、でも仕事なのか、なんてことは口にはされない。


だからこくりとだけ頷くと、腕を引き寄せられてまた唇が重なった。



「外寒ぃけど、風邪引くなよ。」


いってらっしゃい、なんて言葉も使わない。


だからあたし達の関係は、未だに名前のないものなのだ。


孤独な夜を共に紡ぐだけで、それはジュンの言うように、明日の保障すらないもの。


準備をして、無言のままに部屋を出て、タクシーに乗ってクリスタルの事務所へと向かった。


そしていつも通りに詩音さんに見送られ、ジローの車に乗って、ホテルまで行く。


繰り返すだけの、そんな日々。



「はい、到着ね。」


車を停車させ、ジローは言う。



「じゃあ、3時間後に。」


「3時間?!」


と、驚いたあたしに、逆に彼の方が目を丸くしていた。



「高田さんだよ。」


あぁ、と肩をすくめた。


あたしの上客であり、過去に6時間も拘束された時には、もう本当に嫌だと思ったけど。


だからその顔を思い浮かべ、3時間ならマシな方なのかもな、と舌打ちを混じらせた。



「そんな顔しないで、頑張って来てね。」


励ましてるつもりで、心のこもっていない言葉。


そんなジローにまた舌打ちをし、ぬくもりきった車から降りた。