「ジュンちゃんはさ、ホストやってて楽しい?」


問うたあたしに彼は、考えるような仕草を見せる。



「最近はそうでもねぇよ。
何か飽きてきたし、色々と面倒なこと多い。」


「…面倒、って?」


「流星くんのご機嫌取ってやったり、後輩とかに飯奢ったり。
愚痴とか相談とか、部長って意味不明の役職とか、何で俺がそんなこと、って思ったりね。」


肩をすくめ、ジュンはビールを流し込んだ。


結局はどんな仕事だろうと、誰かとの関係の狭間で生きるということか。



「俺さ、前まではナンバーとかに固執してたけど、最近気合い入んなくて。
ある程度のものを手に入れたとは思うし、そしたら欲もなくなったのかもな。」


この街の人はみな、それが当然のように上を目指す。


だから到達すべき場所を見失った者は、それに苦悩するのかもしれない。



「辞めんの?」


「いや、まだ辞めない。」


ジュンは自分で考え、そして答えを見つけられる人だ。


だから彼が強い瞳でそう言う以上、あたしは口を挟まなかった。


酒の味にも、痛みにも、慣れただけなのか、麻痺してしまったのかはわからないけど。


それでもこの街に押し負けないようにと、あたし達は生きていたね。


お金が欲しいのは当然のこと。


けれど、ジュンが見ていたのはもっと別のものだったのだろうと、今では思う。