この街で、オーシャンというホストクラブは有名だ。


だからナンバーツーとはいえ、ジュンだってこんなんでも名は通っている。


アッシュのストレートを遊ばせ、長い前髪から覗く瞳と、口元のピアス。


ちょっとビジュアル系っぽいけど、どこを取ってもホスト然としていて、つまりは目立つ存在なのだ。



「つーか、男いるってマジ?」


「今更その話?」


「お前がメール返さねぇからだろ!」


口うるさいお兄ちゃんのようだと、いつも思う。



「良いじゃんか、あたしが誰と何してようと。」


そう返した瞬間、ジュンは不貞腐れたような顔になり、



「百合、そいつのこと好きなの?」


「うん、好きだよ。」


と、言ってやると、彼はビールを噴き出すように驚いてくれる。


ゴホゴホと咳き込むジュンを前に、汚いなぁ、とあたしは、口元を引き攣らせてしまうのだが。



「おいおい、マジかよ?」


愛だとか恋だとか、そういったことはわからない。


けれどもあたしは瑠衣のことが好きで、彼もまた、あたしを好きなんだと思う。


あれから、たまにだけど一緒にご飯を食べに行くようになったし、それはそれで楽しいのかもしれない、とも思うのだ。


あたし達はただ、同じものを共有することで、孤独を紛らわせている気になっているだけかもしれないけれど。


でも、ジュンはあまり納得していないような顔で、頬杖をつく。



「じゃあお前今、幸せなんだ?」