「うち、別に誰のことも恨んでへんねん。
そらオトンは嫌いやけど、そんなんしたって自分が苦しいやん?」


許すことは、簡単ではない。


けれども真綾は、あたしより強いのだと思う。


ふと、復讐のために生きている、と言ったアキトのことを思い出した。



「誰かを恨んだら、自分も同じように、他の誰かから憎まれるんやて。
因果応報っていうらしいねんけど。」


だからそれが嫌なのだと、彼女は言う。



「お客とかな、うちとヤッてて幸せって言ってくれるねん。
やから所詮は体だけやったとしても、いっぱいみんなを幸せにしてたら、いつかそれが自分に返ってくるかもやん?」


どうしてそんな風に考えられるのだろう。


けれども真綾は、そう思い込むことで自分自身を救っていたのかもしれないと、今では思う。



「まぁ、とりあえず金は必要なんやけどね。」


「…どうして?」


「だって、生きるためには当然やん?」


生きるために。


そう言った時の彼女の瞳は、強く何かを決意しているかのようにも見えた。


生きる意志の乏しいあたしとは大違いで、だから眩しくて、無意識のうちに目を逸らしてしまう。



「百合りんは、いっつも泣いてるみたいな顔やんか。」


「…えっ…」


「昔のうちみたいでな、そういうの気になるねん。
死にたがりな目して、一体何を見てるんやろう、って。」


真綾は責めるでもなく言ってくれる。


けれども心の内を覗かれている気がして、だからどうしても、居心地が悪く感じてしまうのだ。