瑠衣と別れた時、すでに街は夕暮れ色に染められていた。


ここでだって同じ陽の色なのに、どうしてあの頃、何もかもを斜に見ようとしていたのだろう。


風が運ぶのは、懐かしい匂い。


やはり地元の澄んだ空気とは全然違うけれど、でも確かにあの頃ここで生きていたという証であり、記憶。


今では少しだけ、愛しく感じられるんだ。


雑踏の中で立ち呆けていた刹那、鳴り響いたのはあたしの携帯の着信音。


ジュンだった。



「どうしたの?」


『んー、どうもしないけどさぁ。』


「何かあるなら言いなよ。」


歯切れの悪い台詞に急かすように言うと、一瞬沈黙し、彼は電話口の向こうで息を吐く。



『…瑠衣さんと、どうなったのかな、って。』


「不安だったんだ?」


ジュンにしては珍しいと笑ってしまうけれど、気持ちは痛いまでに分かる。


過去との再会は、時として今を壊すことにも繋がるから。


でも、あたしは瑠衣とも詩音さんとも違う。



「心配しなくても、ジュンと生きてる地元があたしの居場所だから。
きっともう、思い出して泣くことはないよ。」


そっか、と彼は言うだけだった。



『なぁ、今どこにいる?
すぐ行くよ、俺はお前のこと待たせたりしないから。』


ありがとね。


そう返した時、笑ったままに電話が切れた。


ジュンとだってこれからどうなるのかなんて全然わからないけれど、でもきっとどんな形になったとしても、あたし達は一番近くにいると思う。


彼は優しさを強さに変えられる人だ。