瑠衣は少し車を走らせ、山道を登っていく。


それから駐車場のような場所で車を止め、歩いて石階段を上がった先には、神社らしきものがあった。


眼下には街を一望出来る景色が広がっていて、花火大会のあった河川敷どころか、遠く海まで見渡せる。



「すごいね、ここ。」


地上より涼しげな風が吹き抜けて、あたしは目を丸くしながら身を乗り出した。



「あの頃はさ、苦しくても必死で生きてるつもりだった。
けど、この景色見た時、そういうの全部ちっぽけに感じてさ。」


「うん。」


「どうしてもっとちゃんと、百合のこと大切にしてやらなかったんだろう、って。」


瑠衣は少し悲しそうな顔になる。



「怖がって、結局は逃げてばっかでさ。
頭では分かってても、色んな理由付けて、結果としてお前のこと苦しめてた。」


一番聞きたいことを言葉に出来ないのは、どうしてだろう。


出掛かったそれを喉元で堪えると、泣きそうになっている自分に気がついた。



「俺、祥子のことも幸せには出来なかったから。」


驚いたあたしに彼は、かいつまんでこの二年を話してくれる。


摘発が迫っていた彼女を連れて一緒に街を出たけれど、でも結局は、互いに幼かった頃の出来事と向き合えなかったこと。


過去に見ていた自分たち自身と現実の差が埋められなくて、幸せにならなければと思えば思うほど、相手を大切に出来なくなっていったこと。


全てを捨てたつもりでも、一変してしまった生活環境の中で苦しんだこと。


結局、何も上手くいかなかったのだと、彼は言う。



「きっとさ、記憶の中で相手のこと、美化しすぎてたんだろうな。」