瑠衣の部屋に戻った時、彼はいつもの出窓に座り、煙草を咥えたままに物思いにふけっているような目で、外を眺めていた。


そしてあたしに気付き、咥えていたものを灰皿になじる。


さすがに今日は、お酒を飲んでいないらしい。


と、いうか、詩音さんのところには行かず、ちゃんとあたしを待っててくれていたのだろう。


それはきっと、最後の誠意。



「ただいま。」


言って、可笑しくて笑ってしまった。


瑠衣は少しだけ口元を緩め、あたしを手招くように出窓に座らせる。


思い出すのは、いつもここで酒を酌み交わしながらした、くだらないだけの会話ばかり。


それももう、遠い昔のことのようだけど。



「ごめんな、百合。」


あたしは静かに頷いた。


もう何度、彼の謝罪の言葉を聞いただろう。


その度に苦しくて、悲しくて、堪らなくやるせない気持ちにばかりなっていたっけ。


瑠衣はあたしの肩口にもたれ掛かるようにして、頭を預けた。



「お前のこと好きだったし、多分愛してた。」


「うん。」


「でも、心のどっかで、お前は傷つけたってここから離れないって思ってて、悲しい顔してたって見ないフリしててさ。」


「うん。」


「そんな自分にも腹立ってたし、身勝手だけど、俺以外見てんじゃねぇよ、って。」


ホントに身勝手だね、とあたしは笑う。


脈絡もなく、でも穏やかに話す彼の姿は、まるで出会った頃のようだ。