夜になり、あたしと真綾はふたり、病院の屋上にいた。


検査などを終わらせ、薬を受け取ったのは夕方で、本当はもうとっくに帰っても良かったのだけれど、でも何となく決意出来ないままに時間だけが過ぎていた。


すでに夜の8時も過ぎていて、河川敷の方の空は明るい。


瑠衣と見るはずだった花火なのに、まさかこんなところで彼女と一緒に見る羽目になるなんて思いもしなかったけど。


ちょうどこの場所は、周りに高い建物もなく、全てとまではいかないまでも、夜空を彩る大輪の花が確認できたのだ。



「ここからでも見えるなんて、意外。」


「ホンマやね。
わっざわざ人の多い河川敷行ってるやつら、アホやわなぁ。」


さすがに酒で乾杯は出来ないので、あたし達は十六茶のペットボトルを持ち上げた。


ちなみにこれは、ジローが買ってくれたもの。


あたしはそれを飲みながら、煙草の煙を吐き出した。


お腹に子供がいた時には、この煙を吸い込むだけでも吐きそうになっていたはずなのに。


なのに今は、何ともないのだから。


昨日と今日では見た目には何ら変わりないはずの平べったいお腹なのに、悲しいけれど、消えてしまった命を思う。



「お腹、痛いん?」


腹部に手の平を置いていたあたしを見て、真綾は問うてきた。


もう痛くないと言えば嘘になるけれど、でも、何も言わずに首を横に振る。


あたしのこの痛みなんかよりずっと、赤ちゃんは苦しかったろうから。


空を割るような花火の音が、こんな場所までこだまして響く。



「花火って、目指すべき人の生き様に似てるねんて。」