「さっき下で、偶然オーシャンのナンバーワンと会ってさ。
で、百合のこと聞いたコイツ、血相変えて走って来ちゃって。」


ジローは説明めいたことを言い、真綾に向き直った。



「お前さぁ、気持ちわかるけど、頼むから後先考えずに走るなよ。」


「…だって百合りんが死ぬかもって思ったらっ…」


「けど、真綾が死んでも百合が悲しむだろ?」


まだ入院中の彼女が、走ることでどれほど心臓に負担を掛けるのかなんて、想像に易い。


なのに、あたしのために、来てくれたのか。


彼女は苦しいのか胸を押さえ、必死で荒い呼吸を整えようとしていた。


瑠衣は何も言わないままだ。



「瑠衣、ごめん。」


帰って、とあたしは言う。



「後で、ちゃんと話しよう。」


どのみちこんな状態の真綾を追い返すことも出来ないし、ここじゃまともに話も出来ないから。


瑠衣は静かに視線を外し、相変わらず何も言わないままに背を向けきびすを返した。


扉が閉まると、安堵している自分が隠せない。


正直、真綾が来てくれて助かった。



「真綾、あたしは大丈夫だから。」


「大丈夫なわけあらへんやろ!
どうして赤ちゃんおるん言ってくれへんかったん?!」


やめろって、とジローは彼女をたしなめる。


けれど、それでも彼女は、



「百合りんが苦しんでるんを助けられへんかったうちは、友達として最低やんか!」