その顔なんて見ることすら出来なかった。


ジュンは依然として瑠衣の肩口を掴んだまま、



「少しでも百合のこと想う気持ちがあんなら、消えてくれよ!」


この人は、どんな気持ちで瑠衣に電話をしたのだろう。


ベッド横に備え付けてある台には、財布に入れていたあたしの保険証と共に、瑠衣の番号や何かが書かれた紙が置かれていた。


それは二度目に出会ったあの時、彼が手渡してくれたもので、ずっとそこに忍ばせたままにしていたものだ。



「出て行けよ。」


瑠衣は唇を噛み締める。



「出て行けっつってんだろうが!」


ジュンは舌打ちを吐き捨て、手を離すと、背を向けて部屋を出た。


扉のしまる音と共に、先ほどとは別の緊張が走り、やっぱりあたしの体は震えたままだ。


百合、と瑠衣は口を開く。



「ごめんな。」


その謝罪の言葉に、何の意味があるのだろう。


詩音さんとどうなったのか、なんてことはもうどうだって良くて、ただ、これ以上関係を修復する術も、その気力さえもない。


ジュンとは全然違う、冷たすぎる腕で抱き締められた。



「大丈夫だよ、気にしなくて良いから。
子供はまた作れば良いんだし、今はとりあえずゆっくり休んで…」


「嫌っ!」


気付けば悲鳴のような声が出ていた。


瑠衣はどうしてそんな風に言えるのだろう、何でまだあたしを繋ごうとするのだろう。


もう無理だって、わかってるくせに。