まるで冷静さを欠いたように、瑠衣は吐き捨てる。


折角平穏だと思っていた日々は、いつもこうやって、簡単に壊れるんだ。



「俺だって腹立ってんだよ!
その辺歩いてるヤツ全員ぶっ殺してやりてぇくらい、ムカついてんだよ!」


「…瑠衣、待ってよ…」


「なのに百合まで何なんだよ!
お前はここに居て、俺の機嫌取ってりゃ良いんだ!」


それが本心なのか、そうじゃないのかはわからない。


でも瑠衣は堰き止められなくなったように、言葉を並べていた。


何も言えなかったあたしを見た彼は、息を吐き、また舌打ちをしてから顔を覆う。



「悪ぃ、俺どうかしてる。」


シャブなんてものは、例え止めたとしても、後遺症が付き纏うものだ。


ふとした時にフラッシュバックが起こったり、覚醒剤後遺症と呼ばれるもので病院に通う人もいるほど。


瑠衣は元々売人なのだし、きっと純度の高いモノをやっていたのだろう。


だからそれは、脳を委縮させ、普通なら何でもないことでこんな風になってしまうのかもしれない。



「良いよ、別に気にしてないから。」


瑠衣に抱き締められた。


その腕はやっぱり震えてて、あたしは落ち着かせるように背中をさすってあげる。



「大丈夫。
瑠衣がここにいるなら、あたしもちゃんとここにいるからさ。」


言うと、彼は切なそうな瞳を揺らし、宙を仰いだ。



「なぁ、一緒にこの街出ない?」




そうだね、瑠衣。

ちゃんと約束したのにね。