出窓で煙草を吹かしながらオレンジジュースを飲んでいると、急に強い吐き気に襲われた。


急いでトイレに行き、その場にうずくまると、胃の内容物が込み上げてくる。


そこに胃液も混ざり、生理的な涙を流しながら吐いていると、ぎょっとした瑠衣は背中をさすってくれた。



「百合、お前マジで顔青いよ。」


まさか、瑠衣に心配されるなんて思いもしなかった。



「平気だって言ったでしょ。」


「平気じゃねぇだろ、もう何回目だよ。
なぁ、やっぱちゃんと病院行って検査とかして…」


「病院なんか行きたくないって言ってんじゃん!」


涙の混じる瞳で睨むと、瑠衣は頭を抱えるようにため息を混じらせた。


ストレスの原因なんて、誰の目から見ても明らかだ。


けれど、瑠衣を責めようなんて気はないし、病院に行く気はもっとない。



「心配しなくても、ただの夏バテよ。」


そう言ってふらつく体を無理やりに立ち上がらせ、トイレから出た。


ひどい眩暈がし、壁に手をついた時、ふと目に留まったのは、カレンダー。


アキトが死んで以来、見ることもなかったものだけど。



「…あっ…」


思わず声が漏れてしまった。


その瞬間、自分の脳裏をよぎった言葉が、にわかには信じられなかったから。


途端に体中から血の気が引き、あたしは壁を伝うように崩れ落ちる。




生理、来てないじゃん。