「お前、仕事は?」


「そのうち行けば良いから。」


「何だそれ、自由業かっつの。」


彼は笑い、吸っていた煙草をあたしの口に運んでくれる。



「アンタこそ、仕事は?」


「俺もまぁ、自由業だから。」


じゃあ人のこと言えないじゃん、とは、面倒なので返さなかったが。



「仕事、何やってんの?」


「んー、色々かな。
平たく言えば、売ったり買われたり、運んだり頼まれたり、とか?」


「アバウトすぎじゃん、それ。」


なのに瑠衣は、新しい煙草を咥えて笑っていた。


それがどうにも柔らかく見えて、だからまた眠くなってしまうが。



「これ、持ってろよ。」


そう言って彼は、銀色に光るものを差し出してくれる。


それは多分、この部屋の鍵だろうけど。


目をぱちくりとさせながらもあたしは、意味もわからず首を傾けてしまう。



「何よ、どういうこと?」


「やるよ、それ。」


いやいや、それじゃあ答えになってないんですけど。


なのに、構わず瑠衣は、



「あと、これね。」


続いて差し出されたのは、メモ用紙。


書いてあるのは携帯番号とメールアドレス、そしてこのマンションの場所だろう、住所まで。


首を傾けてまばたきを繰り返しながらあたしは、それと彼を交互に見た。