それは、苦しみから逃れる術を知らない瑠衣の、唯一の逃げ場。


でも、だからって、シャブをやってることを肯定なんて出来るはずもない。


部屋にはあたしのすすり泣く声だけが宙を舞っていた。



「…やめてよ、アキトがこんなこと知ったら…」


とっくに知ってたよ、と瑠衣は、あたしの言葉を遮った。



「アイツも今のお前みたいに、いっつも俺のこと止めてた。
クスリなんかすんなよ、そんなんで勝手に死んだら許さねぇぞ、ってさ。」


なのに、と彼は、また悔しそうに唇を噛み締める。


そしてあたしに向けて伸びてきた腕は、やっぱりさながら、子が母に抱きつくような頼りないもの。


瑠衣の悲しみが痛い。


互いに弱さを抱えて抱き締め合いながら、あたしは彼の胸の中で嗚咽を混じらせた。



「…何で俺が、アイツの葬式挙げなきゃなんねぇんだよっ…」


瑠衣は体を震わせながら、あたしの背中に回した震える腕に力を込めた。



「…ホントは俺が謝らなきゃなんねぇのに、なのに、何でっ…」


いくら言葉を並べようとも、それは後悔にしかなり得ない。


瑠衣はこれでもう、本当に、全てを失ってしまったんだね。


たかが血の繋がり、されど血の繋がり。





ねぇ、アキト。

頼むから戻って来てよ。



瑠衣が泣いてるよ。