「てめぇ、何やってんだよ!」


瞬間、あたしの上で自由を奪っていたアキトが、鈍い音と共に床に倒れ込む。


そこには、息を切らした瑠衣が、歪んだ形相で佇んでいた。



「何だ、早かったね。」


アキトは口元を拭いながら体を起こす。



「何のつもりか知らねぇけど、あんまナメたことやってっと殺すぞ!」


「出来ないくせに大口叩くなよ。」


彼が吐き捨てた刹那、瑠衣は再びアキトに殴り掛かった。


目の前で、一体何が起こっているというのか。



「わざわざご丁寧にメールまでしてきて、何企んでんだよ!」


繰り返される鈍い音。


あたしがここに来てすぐ、アキトは携帯をいじっていたけれど。


それがまさか、瑠衣にメールをしていて、そしてこの人は現れたということか。


けれど、本当にどうして?



「瑠衣、やめて!」


ただ、今は涙ながらに必死で制止することしか出来ない。



「ねぇ、やめてってば!」


「うるせぇよ、ぶっ殺さなきゃ気が済まねぇだろ!」


「お願いだから、アキトが死んじゃうよ!」


振り上げた拳を掴むと、瑠衣は心底苦々しげに舌打ちを吐き捨てた。


アキトは咳き込みながらも、もう起き上がる気力さえ持てないのだろう。


ただ、誰のともわからない乱れた呼吸が、緊張の帳を大きく包みこんでいる。