生きてるだけで丸儲け、と思えるほど、人の心は強くない。


まだ20年ほどしか過ぎてない彼女の人生は、折り返し地点にも到達していないのだから。


けれど願わくば、真綾には、いつかこんな日々を笑い飛ばせるくらいになってほしい。



「真綾の傷は、恥ずかしむことなんかじゃないよ。
よくわかんないけど、アンタ格好良いと思う。」


上手く言葉では伝えられない自分のボキャブラリーの乏しさには、呆れてしまうけど。


でも、あたしが言うと、彼女は少し困ったように笑っていた。



「まさか、百合りんに励まされるとはな。」


「何それ、どういう意味よ。」


窓の外は相変わらず、真綾に似合いの雲ひとつない青だ。


とてもあの濁った色した街で見るものと同じだとは思えない。



「アンタはさ、上向いて生きてんのが似合ってんの。
そういうので、あたし救われてたからさ。」


「今日は随分と素直やん。」


「あぁ、あたし病人には優しいから。」


と、茶化すように言ってやると、彼女は頬を膨らませた。


けれど互いに顔を見合わせ、噴き出したように笑ってしまう。


いつの間に、あたしはこんな風に他愛もないことで笑顔になることを忘れてしまっていたのだろうか。



「なぁ、百合りん。」


ふと、真綾はあたしを見つめた。



「命は粗末にしたらあかんって言うけど、あれホンマかもな。」