再びあたしひとりで病室に戻ると、ベッドの上で、真綾は「遅ーい!」と口を尖らせていた。


真っ白なカーテンがはためき、部屋に流れ込む風はひどく心地の良いものだ。



「めっちゃ暇やし、これやから入院って嫌やねん。」


「我が儘言わないの。」


言ってからあたしは、先ほどまでジローが座っていた丸椅子へと腰を降ろした。



「それよりさ、ジローがずっといてくれてたんだね。」


あぁ、と言った後で、少し気まずそうにうん、と付け加えられる。


同情なんかされたくないと言っていた彼女は、やっぱり複雑な気持ちなのかもしれないけれど。


真綾は布団を顔の半分まで被り、不貞腐れたように口を開く。



「目が覚めた時に一番にアイツの顔見てな、うち不覚にも泣いてしもうたわ。」


「うん。」


「痛くてホンマに死にそうやったけど、あの馬鹿の方が逆に良かった、良かった、って言ってうちの手握るねん。
その時初めて、生きてて喜ばれた気がしたんや。」


彼女は窓の外へと視線を滑らせた。



「あかんよなぁ。
らしくなさすぎて調子狂うで、アイツもうちも。」


悲しそうに呟いた真綾の言葉が消える。


だから余計に、素直になれないのかもしれない。



「けどさ、ジローだって本気で心配してたみたいだよ、真綾のこと。」


彼女はまた息を吐いた。



「傷が残るってわかってたはずやのに、いざ生きて戻れたら、今度はそれを嫌やと思ってしまうなんて、うちは欲張りなヤツなんや。」