アンタの所為でこっちは犯されたっての、なんてことは言えないけれど。


何だかんだ言ったって、アキトは瑠衣の性格をよく知っているということだ。



「てか、預かってらんないし、返したいんだけど。」


『百合が使ってれば良いのに。』


余程この男は、火に油を注ぐのが好きなのだろう。


いや、相手が瑠衣だからこそ、なのかもしれないけれど。


恨みながら生きることに疲れたのだと言いながらも、その腹の底までは読み取れない。



「じゃあ、いらないんなら捨てるよ?」


『百合はあれを捨てることなんて出来ないでしょ。』


どうしてわかった風に言うのだろう。


確かにあたしは、瑠衣がいない時間、気付けばアキトのジッポを眺めている。


だからまるで見透かされているかのようで、無性に腹が立って唇を噛み締めた。



「アンタ、何なわけ?!」


声を荒げてみても、電話口の向こうの様子に変化はない。



『そんな怒らないでよ。
俺はただ、大好きな百合ちゃんに持っててほしいなぁ、って思ってるだけなんだから。』


そんな冗談交じりの言葉を聞き、



「バッカじゃないの?」


吐き捨てた後で、電話を切った。


いつも飄々とした態度を崩すことのないアキトは、一体何を考えているのだろう。


瑠衣とあたしを、どうしたいというのだろうか。