それは、雨の中休みとはいえ、雲に覆われたある日のこと。


クリスタルは無事にかどうかは知らないが、でも営業を再開したと聞いた。


あたしはもう部外者だから、それ以上のことは聞くに及ばないけれど。







「中へどうぞ。」


男はあたしにそう声を掛け、扉を閉めた。


あちら側とこちら側はプラスチックボードによって仕切られ、パイプ椅子がぽつんとあるだけの空間。


留置所の面会室は、ひどく無機質な場所だった。


少し待っていると、ガチャリと向こう側の扉が開いた。



「香織!」


思わず椅子から立ち上がると、板一枚を隔てた距離で、彼女は唇を噛み締めるようにして顔を俯かせる。


香織の涙を初めて見た。


スッピンも、巻いてさえいない髪も、スウェット姿も、何もかも。


あれほど贅沢暮らしが身に染みていただろうに、ここでの生活を思えば、心中を察するにはあまりにも忍びない。


けれど今まで、押し潰されてしまいそうなほど大きな虚栄心で身を固めていたんだね。



「元気?」


そう聞くことが精一杯だった。


僅かにその頭が上下し、やるせない気持ちでいっぱいになる。


自業自得とは言え、これが流星を選んだ結末なのだから。