「だから瑠衣に会いたくはなかったのに。」


全てを吐き出すように話した彼女は、ふうっ、と息を吐いた。


誰も信用せず、人を見下した目ばかりをする詩音さんの、それが弱さの横顔だったのかもしれないけれど。


人は鬼にはなりきれない。



「あたしも瑠衣も、もうあの頃とは違うの。」


彼女は言った。



「だから一緒にこの街を離れるなんてことは出来ないわ。」


瑠衣がそう誘ったのだろうか。


ずっと探していたのだから当然の言葉だというのに、やっぱり虚しさは拭えない。


あたしとでは、そんな選択肢なんてなかったのに。



「あたしは瑠衣を捨てたのよ。」


詩音さんは自己解決していたとしても、きっとあたしも彼もまだ、過去という名の鎖に囚われたままなのだから。


この時初めて、あんなに必死なお兄ちゃんの気持ちを理解したのかもしれないけれど。



「百合ちゃん、安心して。
あたしはもう、二度と瑠衣とは会わないから。」


何を安心しろというのだろう。



「ごめんなさい、帰ります。」


立ち上がると、外はもう、時間もわからなくなるくらいに鈍色に染まっていた。


頭がくらくらとして、また胃が鷲掴まれるような感覚に陥ってしまう。


ドアに手を掛けた時、気付けばあたしは口を開いていた。



「人や金を支配するって、どんな気分なんですか?」