3年後、借金を全て返し終わった時、喜びなんて感情はなかった。


何かを理由にすることで逃げることを正当化してきたのに、もうそれすらも失ったのだから。


これからどう生きて行けというのか。



「少しお話を良いですか?」


それが、緒方さんとの出会い。


色々な繋がりから名前だけは知っていたけれど、こんなただの風俗嬢と話すこととは何だろう。



「金を稼ぎたくないか?」


それが最初の問いだった。



「今まで、金に苦しめられ、人に見下されて生きてきたんだろう?
なら今度は、金を支配し、人を支配したいとは思わないか?」


ひどく甘美な誘惑だったのかもしれない。


今まで、どれほどの屈辱に耐えてきたかということを思えば、それは千載一遇のチャンスだった。


これから稼ぐ金は、全て自分の手に残る。


生きるということは、人を蹴落とさなくてはならないのだと知っている。


緒方さんは、一緒にホテヘル店をやらないか、という話を持ち掛けてきたのだ。



「人の欲望を、お前の手の平の中で転がしてみろよ。」


這い上がりたかった。


もう、人の下で踏まれて生きてはいけなかった。



「やります、やらせてください。」


こうして生まれ育った街に戻ったのだ。


苦々しい過去の全てに蓋をして、上だけを見て生きようと心に決めた。


21の春だった。