あれ以来、各地を転々としながら、お父さんとふたりで生きてきた。


いつまで続くのかわからない生活の中で、気付けばいつも、見えない何かに怯えるようになっていた。


生活の基盤なんてものはないから、借金ばかりが増えていく。


一度逃げればもう、二度も三度も同じようなもの。





そんな中で、
お父さんが死んだ。





残されたのは、見たこともない額に膨れ上がった借金だけ。


今度こそ本当にひとりになった。


18の春だった。






人身売買なんて外国でだけの話なんだと思っていたけれど、実際、自分は売られ、そして風俗嬢となっていた。


本番をすれば金がもっと稼げるなんて、ひどくわかりやすい世界なのかもしれない。


もう、失うものなんて何もなかった。


なのに、全てから解放されたいと願う一方で、いつも月を見上げれば瑠衣との幼くも優しかった時間を思い出す。


それと同時に、あの凄惨な光景も。





思い出したくなんてないはずなのに。


なのにいつも、心のどこかで瑠衣と会いたいと望んでしまう。


けれど、例え会うことを許されたとしても、もうあの頃とは何もかもが違ってしまっているのだから。


付き纏う過去に縛られて、だから必死で忘れようとした。


それが一番だと思っていたんだ。