瑠衣という男は、いつもどこか寂しそうな目をする人だった。


まるで月明かりのように頼りない瞳に、気付けば吸い込まれるように見入っていた。


物欲しさの反面で、全てを諦めてしまおうとする。


なのに他者に対しては、拭えない優しさを持っている人。


家族になったのだ。


例えそこに血の繋がりなんかなくとも、漠然と上手くやっていけるのだと思っていた。



「俺には祥子がいてくれるだけで良いんだ。」


純愛、という言葉が適切かどうかはわからない。


それは決して恋と呼べるようなものではないけど、でも確かに瑠衣を愛していた。


片時も、繋いでいる手を離したくはなかった。


きっと互いに、目に見えた確固たる繋がりを求めていただけなのかもしれないけれど。


ふたりで見上げる月は、いつも綺麗だった。


例えばそれは、家族で囲む食事は美味しい、ということと似ているのかもしれない。


瑠衣と見るものなら、それがどんなに薄汚れたものでも、きっと大丈夫なんだと思っていた。


思っていたはずなのに。


お父さんが段々と昔のように戻っていっていることも、薄々は感じていた。


電話を受ける度にすいません、と繰り返す有紀恵さんを見て、もしかしたら、と思うことも何度もあったのに。


また家族が壊れるかもしれない。


いや、それよりも、瑠衣に嫌われてしまったらどうしよう。


そんなことばかりが頭を占め、不安になると、まるで安心させるように彼は、自分と手を繋いでくれた。


この一瞬が、永遠に続けば良いと、いつも思っていたのにね。